燃料税の引き上げ計画に反対し、フランス全土でデモが巻き起こっています。黄色いベストを着て抗議する、というのがシンボルとなっているため、『黄色いベスト運動』と呼ばれています。

大規模なデモが起こると便乗してくる暴徒(壊し屋 « Casseurs »と呼ばれる)も登場し、この週末はシャンゼリゼ通りでも火災が発生するなど、大変な事態となってしまいました。フランスでは今、カルロス・ゴーン氏逮捕のニュースよりも、『黄色いベスト運動』の方が、遥かに大々的にメディアで取り上げられています。

この件に関して、政府と『黄色いベスト運動』は、それぞれ「自分が正しい」という確固たる信念を持っているため、どちらも譲らず、非常に難しい展開となっています。

マクロン政権は「環境を守るために、燃料税を上げてガソリン車の利用を徐々に諦めさせるのが最適な方法だ」と考えています。

対する黄色いベスト運動の言い分は、「今現在、既にガソリン料金の約60%が税金だ。これ以上、我々の税負担を高めようとするとは、単に環境問題を口実にした無謀な増税ではないか。」というものです。郊外や地方に暮らし、車がないと生きていけないけれど、燃料費が上がるからといって、簡単に「じゃ、電気自動車に買い替えましょう」というお金が出せない人たちにとって、燃料税の値上げは家計の大打撃となります。

それに加え、「マクロン大統領は、ISF(富裕税)を廃止したくせに、貧しいフランス人からは更に税金を取ろうとしているのか。やっぱりマクロンは金持ちのための大統領だ」という反感もあり、今回の大規模なデモに繋がっているのです。

ちなみにマクロン政権は燃料税を上げますが、ディーゼル車から電気自動車やハイブリッド車に替える際のお手当金も現状の最大2500ユーロから、最大5000ユーロ(約65万円)に上昇させる計画を明らかにしています。黄色いベスト運動で抗議する人たちは、「電気自動車はとても値段が高いから、たった5000ユーロの手当てなんて何の意味もない」と言いますが、中古車を購入するのであれば、決してこの手当ては「意味のない金額」ではありません。この辺りは、政府がもっと時間をかけて国民と対話する必要がありそうですね。

11月21日、22日に行われたフィガロ紙とラジオ局Franceinfo、共同の世論調査によりますと、77%のフランス人が「黄色いベスト運動は正当だと思う」と回答しています。ここまで多くのフランス人が納得していない増税案に関して、マクロン大統領はどのような対応をするのでしょうか?問題の解決にはまだまだ時間がかかりそうです。