前回のブログ記事で、『共和党前進』の党首であると同時に首相付き国会関係担当副大臣のカスタネール氏が、相続税の増税を匂わすような発言をしたことをお話ししました。

カスタネール氏が自らの見解を述べたのが先週金曜日。それから3日後の月曜日の夕方(昨日の夕方です)、マクロン大統領が相続税の増税を完全否定した、ということが伝わり、とても驚きました。しかも一部のメディアによるとマクロン大統領はカスタネール氏に対してカンカンに怒っているとのこと。

同じ政府、同じ政党にいる人が、大統領の考え方と違うことを勝手に言い出したということなのでしょうか?なんだかコミュニケーションが非常に上手くいっていない感じですね。先月、二コラ・ユロ氏が環境連帯相を突然辞任した時も、大統領や首相には全く相談がなかったようですし、何らかの問題があるのかもしれません。

国民の支持率も極めて不調です。ただでさえ改革に反発する人たちの不満がくすぶり、今年に入ってから人気がどんどん下がっていたところ、7月に発覚したスキャンダル『ベナラ事件』により大統領の支持率はがた落ちとなっています。

『ベナラ事件』を大雑把にまとめますと、マクロン大統領の側近の一人であるベナラ氏が、警察官でもないのに大統領側近の立場を利用して警察装備を使い、デモの参加者に暴行を加えたが、縁故により軽い処分で済んでいた、という事件です。まさにデモの参加者に暴行を加えているところを撮影した動画が7月にメディアで大々的に取り上げられ、それこそ連日トップニュースになる程、フランスでは大問題となりました。ちなみにベナラ氏はその後、解雇されました。

このスキャンダルにより、マクロンへの不信感は膨れ上がりました。下記は7社の世論調査の結果とその平均(黒い線)の推移を表したものです。

(出典 : Le Journal du Dimanche紙)

上記のグラフは8月までのデータですが、今月に入ってからは何と支持率が20%を切ることもある始末。

そんな状況で今回、本来なら味方であるべき同じ政党の人が相続税の増税など言い出したものですから、マクロン大統領が怒るのも無理はないですね。

取りあえず相続税の増税はない、ということで、カスタネール氏発言が巻き起こした動揺は収まりそうです。