首相付き国会関係担当副大臣のカスタネール氏(マクロン大統領が設立した政党『共和国前進』の党首でもあります)は先週金曜日、相続税に関してタブーなしに検討するべきだ、という見解を述べました。大統領選のマニフェストでは『相続税の増税はない』と言っていたマクロン大統領ですが、フランス政府にはお金がないので相続税にも手を付けざるを得ないかもしれない、というところなのでしょう。

2018年9月現在、フランスでは一人の親から一人の子供に対する相続税の非課税枠が10万ユーロ(約1300万円)で、最大税率は45%です。フランス会計検査院の付属機関であるCPO(CONSEIL DES PRELEVEMENTS OBLIGATOIRES)が今年1月に出したレポートによりますと、85~90%の人たちが、親子間の相続税を支払わずに済んでいるそうです。

なぜ、ほとんどの人が相続税を支払っていないのでしょうか?

1つ目の理由は富の集中にあります。米国などに比べると、強烈な富の集中という訳では全くありませんが、それでもINSEE(国立統計経済研究所)の直近のレポートによりますと、フランスで上位10%に当たる富裕層が、総資産の47%を所有しています。非課税枠を超えるほどの資産を持っていないために、相続税を支払っていない、というケースが多々あるのです。

2つ目の理由は、フランスには様々な相続税対策があり、しっかり前もって準備をしておけば、相続税の負担を劇的に減らすことも可能なのです。当社の『フランスの相続・生前贈与』のセミナーをご受講いただいた方は、既にご存知ですよね。

相続税からの税収は毎年100億ユーロ(約1兆3000億円)前後です。これがもっと増えてくれたら、もちろん政府にとっては大助かりでしょうが、相続税増税には右派・左派政党、共に反対論が多いので、どうなるかは全く分からない、という状況です。