大気汚染の悪化のため、パリとその近郊では12月6日~9日の4日間にわたり、次のような緊急措置が取られました。

● 公共交通機関を無料で利用できる。
● 車の利用を抑えるために、ナンバープレートの末尾が偶数か奇数かのどちらか一方のみ、パリとその近郊の一定地区への乗り入れが許される。電気自動車・ハイブリッド車や、3人以上乗せている車(相乗りして交通量を減らせるので)なら、ナンバープレートに関わらずOK。
● オートリブ(Autolib’— 電気自動車のカーシェアリング)を始めて利用する人に対して1時間分の料金が無料。
● ヴェリブ(Velib — 自転車のレンタルサービス)で1日乗り放題券が無料。
● 居住地区の路上駐車場も無料(自家用車ではなく、公共交通機関で通勤してもらうため)

ちなみに車に関する規制はリヨンやグルノーブルなどパリ以外の都市でも行われています。

パリの大気監視機関「エールパリフ(Airparif)」では大気中の粒子状物質の濃度を日々観測しています。大気中には多くの粒子が浮遊していますが、粒径10マイクロメートル(0,01mm)以下の浮遊微粒子はPM10と呼ばれています。下記の表はパリのポンピドゥー・センターに設置してある観測所で記録されているPM10濃度のうち、過去において、もっともひどい数値を出した日にち20日分をピックアップしたものです。フランスでは日付を書く際に、日/月/年と書きますので、PM10濃度が一番高かった日は、下記の表の一番上の01/12/2016、つまり2016年12月1日だった、ということになります。12月1日と2日には、1立方メートルあたり100マイクログラム(1マイクログラムは100万分の1グラム)を超えていたのですね。

pm10-centre-pompidou

(出典 : エールパリフ)

さて、冒頭に書きましたように、公共交通機関やオートリブ、ヴェリブがこの4日間、無料になった訳ですが、このことが経済に与えた影響はどの程度だったのでしょうか?イル・ド・フランス地方の交通機関の労働組合によると、RATP(メトロやRER、バスなどを運行するパリ交通公団)とSNCF(フランス国鉄)を合わせて、乗車賃の無料化は1日あたり400万ユーロ(約4億8800万円)の損失を意味するそうです。加えて、この3日間、ヴェリブやオートリブも無料でしたので、1日あたり14万ユーロの収入を得る機会が失われたことになります。また居住地区の路上駐車場も無料となりましたので、市にとっては一日あたり推定5万ユーロの損失となりました。これだけの経済効果を失ってまで、環境対策に挑むフランス。かなり気合いが入っていることが伝わってきますね。