今のところ欧州連合で承認されている新型コロナワクチンは『米ファイザー&独ビオンテック』、『米モデルナ』、『英アストラゼネカ&オックスフォード大』により開発された3種類のみです。

フランス勢はワクチン開発にかなりの遅れを取っています。昨年12月、仏大手製薬会社のサノフィは、開発中のワクチンが出来上がるのは早くても2021年の終わりになると発表しました。そして1月25日、今度はパスツール研究所が、ワクチン開発のプロジェクトの一つを断念することを発表しました。

ワクチンの生みの親と呼ばれるルイ・パスツール氏はフランスが誇る科学者です。パスツール氏は晩年をパスツール研究所の設立に捧げました。その研究所と密接な業務を行っていたのがサノフィ・パスツールです。サノフィ・パスツールは現在、サノフィ株式会社のワクチン事業部として活動しています。

パスツール氏が設立したパスツール研究所も、当初、共に事業を行っていたサノフィも、どちらもワクチン開発で他国に遅れを取っているのです。フランス人はこの分野において、もはや活躍の場を失ってしまったのでしょうか?

そんなことは全くありません。今現在、様々な国で接種されているコロナワクチンを開発した3社のうち、2社(モデルナとアストラゼネカ)のCEO(最高責任者)はフランス人なのです!二人共、フランスでしっかり教育を受けた後に、世界に羽ばたきました。優秀な人材が国境を超えて、より高い給与を支払ってくれる会社に行く、というのはありがちなことですよね。

ちなみにサノフィはフランスの会社ではありますが、現在のCEOはイギリス人です。グローバルな買収・合併の多い製薬業界はとても国際的なのです。

サノフィは今、多くのプレッシャーにさらされています。国からの資金提供を受けているにも関わらず、ワクチンの開発は遅れ、しかも研究開発の人員削減も予定していることに対する落胆、そして従業員の不満は募るばかりです。そんな中、1月27日に同社より思いがけない発表がありました。

フランクフルトにある自社工場で、ファイザー&ビオンテックが共同開発したワクチンを生産する、というのです。世界的なコロナ危機を乗り切るためライバル会社に協力するとは・・・。サノフィのCEOは、自社のワクチン実用化が来年終盤にずれ込むため「現時点でどのような支援ができるかを検討した」とのこと。この決断は素晴らしいですね。

先月、ブルームバーグの記事の中で『史上最大のワクチン接種作戦』という言葉を見ましたが、まさにその通りですね。世界中の国々、企業、国民が絡むこの作戦が効果を生み出してくれることを心から祈ります。