家賃上限法とは、2014年に社会党政権のデュフロ住宅相が提案したALUR法に基づいたものでして、パリを含む指定された都市の家賃が「標準値より30%低い金額から、標準値より20%高い金額の範囲内に収まらなければならない」ように設定させるという法律です。当初の予定では人口5万人以上の全国各地の都市で適用されるはずでしたが、結局、パリとリール、たった2都市のみで適用されていただけでした。

リールでは家賃上限法が今年の2月1日から適用され始めたばかりだというのに、先月、早くもリール行政裁判所がこの法律をキャンセルしました。そしてパリ行政裁判所においても、おととい(11月28日)全く同じ判決が下されました。「近郊も含めたパリ圏全域ではなく、パリ市内のみにこの法律が適用されているというのは、当初の法案に記載された内容と異なる」というのが理由です。

パリ市内では2015年8月1日から家賃上限法が適用されていたのですが、「優れた物件なら上限以上の家賃を設定できる」など定義が曖昧な部分があり、また法外な家賃を取り締まる制度も整っていなかったので、相変わらず上限を守らない家主も多く存在していました。しかもこの法律の導入が決まってからというもの、賃貸業から撤退する投資家がどっと増えたため、パリ市内の賃貸物件の供給が減り、借りるのが更に困難になった、という副作用まで出ていました。

パリ家賃上限法廃止のニュースを受け、不動産業界は大喜びですが、この法律の発案者であるデュフロ元住宅相はもちろん、社会党員であるパリ市のイダルゴ市長も、今回の判決に大いに不満なご様子です。

政府は既に上訴する意向を示しておりまして、最終的にどのように落ち着くのかが分かるまでには、まだ少々時間がかかりそうです。