税務署サイトにアップデートされたばかりの統計によりますと、2015年度の所得に関して、所得税収総額の70%に当たる金額は、全体の10%に当たる世帯のみが負担しているそうです。細かく見ていくと、上位2%の高所得世帯(納税通知書に記載された参照所得額が10万ユーロ(約1300万円)以上の世帯)が所得税収の41%を捻出しており、更に上になりますと、年に20万ユーロ(約2600万円)以上を稼ぐ上位0.4%の世帯から、所得税収全体の22%が支払われているそうです。

所得税収の大部分が、ごく一部の世帯の負担に集中していることに対する理由として、次の2点が挙げられます。

  1. 所得税は累進課税なので、高所得になればなるほど負担額が大きくなるのは当然である、ということ。
  2. オランド前政権下で行われた税制改革により、所得税を支払わなくて済むようになった低所得世帯が3万件近く増えたこともあり、2016年度、フランスで所得税を課税された世帯は、なんと全体の42.8%のみ!
    という訳で、そもそも所得税を支払っている世帯数が少ないため、所得税の負担が高所得世帯にのみに集中する現象が更に加速している、ということ。

このようなニュースが流れると、決まって多くの人たちが「政府は富裕層や高所得者にばかり税金を支払わせる」といった議論を展開します。確かにそれも一理あるのですが、所得税は政府の歳入の一部を占めるにすぎない、ということを忘れてはいけません。

税務署サイトの統計より、2015年度のフランス国家の税収(NETの額)の内訳トップ3を見てみましょう。

1位 【消費税】税収全体の47% : 1418億ユーロ(約18兆4322億円)
2位 【所得税】税収全体の23% : 693億ユーロ(約9兆125億円)
3位 【法人税】税収全体の12% : 347億ユーロ(約4兆5100億円)

このように国家税収においては、所得や資産の大小に関わらず全国民に課せられる、消費税(フランスでは付加価値税”TVA”と呼ばれる)の割合が圧倒的です。

ここ数日、『上位2%の高所得世帯が所得税収の40%以上を負担』といった見出しで、あちこちのメディアが記事を出していますが、「所得税は政府の税収のごく一部でしかない」ということにまで言及していた記事はごく僅かでした。

何事に関してもそうですが、なるべく全体像を捉えることを心がけ、「木を見て森を見ず」にならないようにしたいものだな、などと、今回の記事を書きながら改めて考えさせられました。