非常に好調だった2017年度に引き続き、昨年度のフランスの不動産市場も力強く上昇しました。INSEE(フランス国立統計経済研究所)のレポートによりますと、2018年度第4四半期のフランス全土の不動産価格は、前年同期比で+3.2%の上昇を記録しました。

しかしながらフランス全土で価格が上昇している訳ではありません。フランス公証人議会のレポートに記載されております下記の地図をご覧ください。こちらは中古アパルトマンの2018年度第4四半期の価格と、前年同期比の変動率を示したものなのですが、ナンシーやグルノーブルなど、2%以上価格が下落している地域が多々あることが分かります。公証人議会は、2018年半ばより「45%の地域が上昇、40%が下落、15%が停滞」という現象が続いていることを指摘しています。

表1 中古アパルトマンの1平方メートル当たりの地価と上昇率
(2018年度の第4四半期と前年同期比)


(出典 : フランス公証人議会)

下記のグラフは2015年度のレベルと100として、2000年から2018年にかけての不動産価格の推移を表したものです。

表2 中古物件の不動産価格の推移(2015年度=100)

(出典 : INSEE、フランス公証人議会)

2008年のリーマンショック直後の1年間、そして2011年のユーロ危機後の4年間にわずかに下がった以外、2000年以降のフランスの不動産価格はほとんどの年において上昇していることが分かります。

不動産価格上昇を支える超低金利

非常に低い住宅ローン金利がフランスの不動産マーケットを押し上げています。

CREDIT LOGEMENT / CSAのレポートによりますと、2019年4月時点の住宅ローン平均期間は227か月(18年11か月)、ローン金利の平均は1.35%でした。2001年から2019年4月までの住宅ローンの平均金利は次のようになります。

表3 住宅ローン金利の推移(%)

(出典 : CREDIT LOGEMENT / CSA)

ローン期間ごとの金利の推移は次のようになります。

表4 期間ごとの住宅ローン金利の推移(%)

(出典 : CREDIT LOGEMENT / CSA)

今月初め、BNPパリバ・リアル・エステート社が公表したレポートで、2008年から2018年にかけてフランス人の不動産購買力が大きく上昇したことが報告されました。フランス人は10年前よりも36%広い物件を購入できるようになっているそうです。その最大の原因はもちろん、この10年で金利が大きく下がったことだと、同レポートは指摘しています。2008年度平均4,7%だった住宅ローン金利が、2018年度には1,4%になったお蔭で、さほどお給料が上昇していなくても、フランス人はより広い物件を購入できるようになったのです。

不動産関連の法改正

不動産に関する直近の法改正を見てみましょう。

【セカンドハウスに対する住民税の上乗せ】
2015年にオランド前政権時代に導入されたセカンドハウスに対する住民税の上乗せは、マクロン政権下でも維持・拡大されています。上乗せ率は5%から60%(!)で、各都市がどの位の上乗せ率にするか選択できるようになっています。全ての都市ではなく『50 000人以上の住民がいる都市』のみに適用されている制度です。パリの上乗せ率は60%です。もしパリ市内にセカンドハウスをお持ちの方で、その住民税が本来なら500ユーロの場合、500ユーロx 60% = 300ユーロが上乗せされ、500ユーロ+300ユーロとなり、800ユーロの住民税を支払わなければならない、ということを意味します。2019年度に上乗せ率を上げた都市もあります。例えばニースの上乗せ率は昨年まで20%だったところ今年から60%へと一気に上昇、ボルドーは20%から50%になることが決定しました。

【パリ市内の家賃上限法の再導入】
2017年11月末に撤廃された家賃上限法が再導入される見込みです。先月13日に政府が正式にゴー・サインを出し、この夏には法が施行される予定です。「家賃を標準値より30%低い金額から、標準値より20%高い金額の範囲内に収める」という以前と同様の条件が適用されることになります。以前は法を守らなかった場合の処罰が定められていませんでしたが、今後は処罰も用意される模様です。パリで不動産賃貸業を行っている方は、要注意ですね。

上記以外にもマクロン大統領就任以来、不動産富裕税(IFI)の導入、不動産所得や売却益にも課せられる社会保障費負担の上昇など、不動産業界にとってあまり好ましくない改革が続々と行われています。そもそも金融業界出身のマクロン大統領は、不動産にはあまり力を入れていない、とよく言われています。黄色いベスト運動を受け、フランス全土の主要県にて行われた2ヵ月にわたる大討論会の中で、不動産売却益の増税計画を匂わせるような発言もしましたし、「不動産は雇用を生み出さない」とはっきり断言したり、と不動産業界から反発を買うこともしばしばあります。現政権下において、不動産市場を活性化させるような税制改革が発動される可能性は極めて低いでしょう。


ここ数年、毎年「超低金利が不動産市場を支えています」と繰り返し書いておりますが、この現象はどうやら継続しそうです。

昨年まで『利上げ&バランスシートの縮小』につき進んでいた米連邦準備理事会(FRB)が、新年明け、突如として『利上げ中止&バランスシートの縮小を小規模で終わらせる可能性』を示唆し始めました。米国だけでなく、欧州中央銀行(ECB)もハト派路線となったため、年初来マーケットでは金利が下がり、株価が急上昇しました。「もうこれ以上下がることはないだろう」と思われていた住宅ローンの金利も、もちろん下がり、不動産市場も勢い付いています。

これほどまでの超低金利時代が続くのは異常ですし、いずれは金利が上昇するのでしょうが、年初の欧米の金融政策の急転換により「いつ金利が上昇するのか」が全く分からくなってきました。非常に低い住宅ローン金利のお蔭で、本年度の不動産市場も上昇気流をたどることはほぼ間違いなさそうです。