11月20日に中道・右派の第1回投票が行われました。何か月もの間、ジュペ元首相とサルコジ前大統領が第1回投票の勝者になるだろうと予想されていたのですが、最後の10日間でフィヨン元首相の支持率が急上昇し、第1回投票ではなんと44%以上の票を集め圧勝しました。よって11月27日に行われる第2回投票ではフィヨン氏とジュペ氏の一騎打ちとなります。第1回投票で敗退したサルコジ前大統領は、政界引退の意向を表明しました。

前回のコラムでは、ジュペ氏とサルコジ氏の経済政策の比較をしましたが、今回の投票結果を受け、フィヨン氏とジュペ氏の政策比較をご紹介したいと思います。

ジュペ氏とフィヨン氏が提案する経済政策

  ジュペ氏 フィヨン氏
公的支出の削減 今後5年間にわたり850-1000億ユーロの削減 今後5年間にわたり1000億ユーロの削減
年金支給開始年齢 65歳に引き上げ 65歳に引き上げ
公務員の年金制度 民間と同様のシステムへ 民間と同様のシステムへ
週35時間労働制 基本的には企業内での交渉に任せる。
法的には39時間に引き上げ
労働時間は各企業が自由に決める。上限はEUで定められている48時間とする。
ISF 撤廃 撤廃
所得税 家族世帯の所得税を引き下げ、20億ユーロ規模の減税 所得税減税は優先事項ではない。但し、子供がいる世帯に対する所得税負担は下げる。
TVA(付加価値税) 現行の標準税率20%から21%へ引き上げ 現行の標準税率20%から22%へ引き上げ
英国離脱問題 強硬な姿勢で離脱交渉に挑むハード・ブレグジット この件に関するフィヨン氏の見解は明らかにされていない。

フィヨン氏は小さな政府を志向し自由主義経済を掲げるフランス版サッチャーと言われています。今後5年で公務員のポストを50万減らし、それは150億ユーロの経費削減になる、とフィヨン氏は意気込みます。国際競争力を高めるため、フランス独特の週35時間労働制は諦め、法人税も現行の33.3%から25%へ引き下げ、また企業は解雇をしやすくなる、というまさにショック療法も打ち出しています。「5年以内にフランスの失業率を7%未満にする」、「フランスをこの10年以内に欧州で一番の経済大国にする」といった野望を持つフィヨン氏。とにかく勢いがあるので、11月27日の第2回投票でも勝利を飾る可能性は高いかもしれません。