「子供が生まれた」と聞くと、フランスの銀行員たちはすぐに子供名義の口座開設を勧めてきます。果たしてそれらの口座は、子供用の資金を入れるのに本当に適した口座なのでしょうか?子供名義で開設できるフランスの主な口座の特徴を確認してみましょう。

Livret A

Livret Aとは、利息に対して税負担が一切課せられない預金口座です。その代わり、金利はインフレを僅かに上回る程度のレベルでしかありません。「税負担がゼロ」ということにばかり気を取られ、「インフレによる資産の目減りを防ぐ程度の利息しか付かない」という資産運用にとって一番肝心な利回りのことをつい忘れてしまう方が多いようで 、Livret Aは2014年度末の口座数が6160万(ちなみにフランスの人口は約6660万人)に達するほどフランスで大人気の口座です。しかしながらここ数年のインフレ率低下に連動し、Livret Aの金利もどんどん低くなり、今年の8月からは遂に金利が0.75%にまで下がりますので、Livret Aに対する盲目的な人気もそろそろ終わりそうです。常に手元に置いておきたい万が一のための資金を預けるのに、Livret Aは非常に適した口座です。但し、Livret Aのような金利の低い口座では、インフレによる資産価値の目減りを防ぐことはできますが、長期的に資産を膨らませることはできません。生まれたばかりの子供名義で開く口座のお金は、相当長期にわたり預けることになりますので、もっと金利の高い商品で運用するべきでしょう。

PEL

PELとは4年から10年にかけて定期積立てを行うことにより、居住用住居購入の際などでローンを組む場合、国からの住宅手当を得ることができる仕組みの住宅貯蓄です。口座開設時の金利が、口座をクローズする時まで適用されます。2015年2月1日以降に開設したPELの金利は2%。利息から毎年、社会保障費負担(2015年7月現在では15.5%)が天引きされますので、実質的には1.69%の利息しか付かないことになります。子供名義でPELの口座を開設することを銀行から強く勧められた、という話をよく聞きますが、PELはあくまでも住宅貯蓄ですので、幼い子供名義で口座開設する意味はほとんどありません。確かに前述のLivret Aよりは僅かながら高い利回りを望めますが、現在の低金利時代の金利が口座クローズ時まで適用されてしまうことを考慮すると、子供名義で開く口座としてはあまりいい選択肢ではなさそうです。

Assurance Vie

フランスでの金融資産形成において必要不可欠なAssurance vieですが、赤ちゃん名義でも口座を開設することが可能です。Assurance Vieに入金したお金は、いつでも自由に引き出すことが可能ですが、口座開設から丸8年が経過してから引き出すと利益に対する税率がガクッと下がります(Assurance Vieに関する詳しい説明は当社サイトのこちらのページでご確認いただけます)。Assurance Vieでは、口座を開き、その中に好きな投資信託を自由に組み込んでいく、という仕組みになっています。Assurance Vieの口座内には、株・債券などの投資信託を入れることもできますし、値下がりリスクのないユーロ・ファンドと呼ばれる元本保証ファンドのみに投資して、通常の預貯金のように利用することもできます。また、そのユーロ・ファンドの利率が他の預貯金口座よりも遥かに高いのも特徴の一つです。2014年度、優秀なAssurance Vieは年率約2.75~3.20 %を実現しました。昨年度のLivret Aの金利は1.00~1.25%でしたので、それに比べると現在の超低金利時代においても、そこそこ高い利回りであることが分かります。また口座残高の一部を優秀な株・債券ファンドに投資することにより、更に高利回りを狙うことも可能です。いつでも口座からお金を引き出すことができ、尚且つ、金利も比較的高めなAssurance Vieは、投資期間が長い子供向け口座として、とても便利な商品です。

Tontine

通常の場合ですと特別な条約を付けない限り、子供名義で口座を開設すると、18歳に達した段階でその口座のお金は成人した子供が自由に使えるようになります。しかしながらある程度、大きな金額を入金してある場合、そのお金を18歳になったばかりの子供がすぐに使える状況にはしたくない、と考える方も多々いらっしゃることでしょう。そんな時に便利なのがTontineという商品です。税制は前述のAssurance Vieと同様なのですが、Tontineでは口座開設時に10年から25年までの投資期間をあらかじめ設定します。満期まではお金を引き出すことができないので、あくまでも余裕資金のある方が対象となります。運用会社にとっては、入金されたお金を確実に全額、満期日まで運用できることが分かっているため、「投資開始時は株比率を高めにして、後半は利益確定売りを兼ねて徐々にリスク比率を下げていく」といった形で、無理のないリスクを取りながら計画的に運用することができます。Tontineは元本保証ではありませんが、170年以上の歴史を持つ運用会社であるLe ConservateurのTontineは、Assurance Vie内で投資できる元本保証のユーロ・ファンドよりも恒常的に好成績を収めています。またTontineでは、満期までの間、口座に入金したお金がISF(富裕税)の非課税財産となる、という特徴もあります。ISFを課税されていたり、早い段階から相続対策を行いたい富裕層世帯にとって、Tontineの利用価値は非常に高いと言えるでしょう。当社では30 000ユーロ以上の資金でのAssurance VieとTontineの口座開設を取り扱っておりますので、ご興味のある方はお気軽にこちらまでお問い合わせください。


子供名義の口座は長期にわたりキープすることになりますので、慎重に口座選びをして賢く運用したいですね。「子供名義で開設できる」=「子供用の資金を入れておくのに最適な口座」という訳ではないことを心に留め、自らの状況やニーズに一番ぴったり合った商品を選ぶようにしましょう。