フランス国立統計経済研究所(INSEE)が発表した数字によると2007年のフランスの出生率は1.98で、EU諸国内1位に輝きます。EU諸国全体の平均出生率1.52と比べると、この数字がいかに飛びぬけているかが分かりますね。フランスの高い出生率を支える理由の一つに、手厚い家族給付が挙げられます。今回はCAF(全国家族手当金庫)を通じて支払われる様々な家族給付の種類、その金額について見てみましょう。全て2008年度現在の数字に基づいています。括弧書きで日本円でおよそいくらになるか示しましたが、ここでは全て1ユーロ=167円として計算してあります。またフランスの家族給付は2004年から大きく編成が変わりましたが、今回のコラムでは2004年1月1日以降に生まれた子に対する家族給付についてお話します。

PRIME A LA NAISSANCE OU A L’ADOPTION (出産手当/養子手当)

子供の出産および養子を迎えるに当たり、出産手当が支給されます。その金額は、実子に対しては863.79ユーロ(約144,000円)、養子に対しては1 727.59ユーロ(約288,500円)です。双子の場合、その金額は2倍になります。

出産手当をもらう為には、所得が下記の上限を超えない事が条件となります。

prime_naissance-v2

ALLOCATION DE BASE (基礎手当)

先程の出産手当を受ける事ができる所得制限を満たす世帯に対して、子供が3歳になるまでの間、毎月172.77ユーロ(約29,000円)が支給されます。養子の場合は、その子を迎え入れた日から3年間の間(但し子供が20歳になるまで)、この手当てを受ける事ができます。

COMPLEMENT DE LIBRE CHOIX DU MODE DE GARDE
(保育方法自由選択補足手当)

6歳未満の子を育てる為に、公認保母さんに預けたり、保育者を雇って自宅で子守をしてもらう際に、保母・保育者に対する報酬の一部を手当金として給付してもらえます。子供の人数・年齢、その世帯の所得、また直接報酬を払うのか、紹介会社経由で払うのかにより、月々の支給額は下記のようになります。

libre_choix_mode_de_garde-v2

COMPLEMENT DE LIBRE CHOIX D’ACTIVITE
(就業自由選択補足手当)

育児のために休業する、または勤務時間を短縮する際、条件を満たせば、育児休業手当を受ける事ができます。その条件とは『8四半期以上、年金に加入していたこと』なのですが、どの期間においてその条件を満たすべきかは、子供の人数によって変わってきます。

libre_chox_activite-v2
月々の支給額は、完全休業か勤務時間の短縮か、また前述の基礎手当を受けているかいないかにより、下記のようになります。

libre_chox_activite_2-v2

ALLOCATIONS FAMILIALES(家族給付)

扶養している子(20歳未満)が2人以上いる場合、所得制限なしで、次の金額が毎月支給されます。

allocations_familiales-v2

更に、子供の年齢が11歳以上になると、毎月の給付額に下記の金額がプラスされます。
– 11歳以上16歳未満 : 33.84 ユーロ(約5,700円)
– 16歳以上20歳未満 : 61.16 ユーロ(約10,200円)

但し、1997年4月30日以降に生まれた子に対しては、上記のように2段階に分けることなく、14歳になった翌月から60.16ユーロ(約10,000円)が20歳になるまでプラスされます。

この年齢によりプラスされる金額ですが、子供が2人しかいない場合、上の子に対しては給付されませんので、注意が必要です。

COMPLEMENT FAMILIAL(家族補足手当)

3人以上の子を持ち、下記の所得制限を満たす家庭は、3番目の子供が3歳に達した翌月から156.60ユーロ(約26,200円)が毎月もらえます。家族補助手当をもらう為には、所得が下記の上限を超えない事が条件となります。

complement_familial-v2

ALLOCATION JOURNALIERE DE PRESENCE PARENTALE
(親付き添い日当給付)

病気や事故に見舞われた子、または障がい児を持つ親が、子供の付き添いをするために一時的に仕事を中断する際に受けられる日当です。3年間を限度として、最大310日分の日当給付を受ける事ができます。その額は、夫婦に対しては一日39.97ユーロ(約6,700円)、一人親家庭に対しては47.49ユーロ(約7,900円)です。ただし、日当給付を受けられるのは月に22日まで、とされています。尚、この日当給付は、前述の就業自由選択補足手当、また失業保険、傷病手当金など、一定の手当を受けている人に対しては適用されませんので、注意が必要です。

更に一定の所得制限を満たす場合、子供の健康に関する出費が月102.74ユーロ(約17,200円)を超えると、補助金として月102.23ユーロ(約17,100円)が追加支給されます。

ASSURANCE VIEILLESSE AU FOYER(老齢年金の保険料支給)

3歳未満の子を持つ、もしくは3人以上の子を持ち、次に挙げる条件を満たす場合、老齢年金の保険料が支給されます。

【条件1】 次に挙げる家族給付のどれかを受けていること。
– 基礎手当
– 就業自由選択補足手当
– 家族補足手当
– 親付き添い日当給付

【条件2】
基礎手当、または家族補足手当を受取っている場合 →夫婦のどちらか一人が働いていないか、あるいは共働き夫婦の2006年度の所得が4,414.44ユーロ(約74万円)を超えないこと。
就業自由選択補足手当、または親付き添い日当給付を受取っている場合 →【2008年度の所得÷12】が1,747ユーロ(約292,000円)を超えないこと。

尚、一人親世帯にはこの【条件2】は必要なく、【条件1】を満たすのみで老齢年金の保険料支給を受ける事ができます。

ALLOCATION DE RENTREE SCOLAIRE(新学期手当)

所得が下記に示す一定額未満の場合、6歳~18歳の子を持つ家庭に対して、新学期手当として毎年8月末に272.57ユーロ(約45,500円)が支給されます。

rentree_scolaire-v2


フランスの主な家族給付について一通り見てみましたが、如何でしたか?この他にも一人親家庭に対する手当や、障がい児を持つ家庭に対する手当などが、それぞれ何種類か存在する、といった大変な充実ぶりです。出生率の上昇は、もちろん家族給付だけでは説明しきれません。子供が増えると世帯の所得税が下がること、託児所や子供を預かってくれる人が数多く存在すること、フランス社会全体に子供を産むことを歓迎している風潮、そして何と言っても女性が子供を産んでからも働き続けられる環境があることも、出生率上昇の大きな要因です。しかし、所得制限を設けている家族給付が多く存在する事からも分かるように、経済的な理由で子供を産む決意ができないカップルの背中をポンと後押ししてくれるような、これらの制度の存在はやはり無視できません。

今回ご紹介した家族給付の中で、敢えて申請する事なしに自動的に受けられる給付は家族給付・家族補足手当・老齢年金の保険料支給・新学期手当のみです。フランスに居住していて上記の条件を満たす場合は、ぜひとも忘れずに申請するようにしたいですね。