環境に優しい世の中にするために、フランスでは省エネ・リフォームを応援する多種多様な制度を用意しています。それぞれの仕組みを詳しく見てみましょう。

Eco-PTZ 【エコ ゼロ金利ローン】

Eco-PTZとは、一定の条件を満たす省エネ・リフォームを行う際に最大30 000ユーロのローンを、なんとゼロ金利で組むことができるという制度です。実際のところローンに対する保険料は支払わなければならないため、ゼロ金利ローン=コスト・ゼロという訳ではなく、保険料分の負担は生じてしまいます。それでも通常のローンよりは遥かに安く資金を調達できますよね。このローンを利用できるのは、主たる居住用住居として利用されている1990年以前に建てられた住宅の所有者です。自らが暮らしている物件はもちろん、賃借人が主たる居住用住居として暮らしているのであれば、その物件の大家さんもこのEco-PTZを利用することができます。しかもこのローンには所得による制限が設けられていないので、どんなに高所得者でもEco-PTZによりゼロ金利でお金を借りることが可能なのです。

対象となるリフォーム工事とは、例えば窓、外壁、屋根・天井などの断熱工事、より効率の高い省エネ暖房への取替え、再生可能エネルギー暖房の設置などです。これらの工事が対象となるかどうかは技術的な細かな条件が設定されていますので、前もってしっかり確認しておくことが非常に重要です。

条件を満たす工事の見積書を持参し、政府とEco-PTZの条約を交わしている銀行(大手の銀行は全て該当)に頼むと、ゼロ金利ローンを組むことができます。適用される工事の条件、及びEco-PTZを提供する銀行名は、地域間平等・住宅省のこちらのページ(フランス語)で確認することができます。

CREDIT D’IMPOT DEVELOPPEMENT DURABLE 【持続可能な開発に関する減税】

CREDIT D’IMPOT DEVELOPPEMENT DURABLE(CIDD)とは持続可能な開発に関する減税措置のことで、省エネ設備の購入費用の一定割合を所得税から減額してもらえるという仕組みになっています。これは2015年12月31日までの期間限定の減税措置です。前述のEco-PTZは不動産の所有者のみが対象ですが、この減税措置は賃借人も利用可能です。工事物件は築2年以上が経過してることが条件となります。賃貸物件の所有者がこの措置を利用する場合は『5年以上の間、家具なしで賃貸し、賃借人がその物件を主たる居住用住居として利用すること』という条件を満たす必要があります。

自らが居住している住居で省エネ・リフォーム工事を行う場合、控除対象限度額は2005年1月1日から2015年12月31日の間の連続する5年間において、独身世帯で8 000ユーロ、カップル世帯では16 000ユーロです。扶養家族が一人増えるごとに、控除対象限度額が400ユーロ増えます。賃貸物件の所有者が工事を行う場合、控除対象限度額は2009年1月1日から2015年12月31日までの期間において8 000ユーロとなります。

控除対象額に控除率をかけた金額が所得税から減額されるのですが、その控除率は工事の種類などにより非常に細かく設定されており、10%~40%とケース・バイ・ケースでかなり違う率が適用されます。減税の恩恵を受けながら効率的に省エネ・リフォームを行うためには、前もって十分に検討しておくことが必要です。

持続可能な開発に関する減税措置の恩恵を受けるためには、所得税の申告の際に、通常の申告用紙の他に省エネ・リフォームに関する申告書も添えて確定申告する事になります。省エネ・リフォームによる減税額がその年に課せられる所得税の金額を上回る場合、税務署はその差額を払い戻してくれます。

PRIME AUX ECONOMIES D’ENERGIE 【省エネ特典】

フランスには省エネ工事を行うと様々な特典をくれる会社が沢山あります。例えば日曜大工のチェーン店のカストラマでは「最大2000ユーロのギフトカードをプレゼント」、ガス会社のGDF Suezでは「優遇されたローンの紹介、更に工事が完了した後に最大685ユーロのボーナス」という特典を用意しています。このような数々の特典が提供される裏には、2005年に発効されたPOPE法があります。この法律は、フランスのエネルギー関連販売会社に対して、自らの会社での省エネ努力はもちろん、顧客に省エネ・リフォームを推進することを義務化しているのです。これらの会社が義務を達成しているかを図るためにCEE(CERTIFICAT ECONOMIE D’ENERGIE)というシステムが導入されています。簡単に言うと、自らの会社または顧客が省エネを推進する工事などを行ったらCEEをもらえる、というように、まるでポイントを貯めるような仕組みになっているのです。各企業は目標のCEEを得るために、ギフトカードや様々な特典を提供しながら顧客に省エネ・リフォームを勧めている、という訳です。

どの工事をした場合に特典がもらえるのか、については各企業がそれぞれ設定していますので、消費者は自らが必要としている省エネ・リフォームを行うためには、どの企業に頼むと一番大きい特典を受けることができるのかをしっかり調べることが大切になります。

他にもまだある省エネ・リフォーム応援措置

フランスにはこれ以外にも、まだまだ多くの省エネに関する措置が存在します。そのいくつかを下記にご紹介いたします。

● 国からの特別手当
一定の所得(一人世帯では25 000ユーロ、カップル世帯では35 000ユーロ、更に扶養家族一人につき7 500ユーロが加算される)以下の世帯が、主たる居住用の持ち家に省エネ・リフォームを行う際に、国から1 350ユーロのお手当金が出るというシステム。所得が非常に低い世帯に対してはお手当金の額が3 000ユーロとなります。2015年12月31日までの期間限定措置。

● 消費税の軽減
2013年11月現在、フランスの消費税率は通常19.6%ですが、築2年以上が経過した物件の省エネ・リフォームに対しては軽減税率の7%が適用されています。2014年1月1日からは前述の『持続可能な開発に関する減税』を受ける条件を満たす工事に関しては消費税率が5.5%になります。但し条件を満たさない工事の場合、来年からリフォームの消費税率は7%から10%へと上昇します。ちなみに消費税の通常税率は19.6%から20%に上がることが決まっています。

● 全国住宅改善協会(ANAH)の手当金
築15年以上の物件の所有者で、一定の所得水準以下の世帯は、条件を満たす場合、省エネ・リフォーム費用(税抜き工事費用上限50 000ユーロ)の35~50%に当たる金額を補助してもらえます。この援助を受けるための所得上限額は2013年11月現在、一人世帯ではイル・ド・フランス地方で23 881ユーロ、それ以外の地域では18 170ユーロ、カップル世帯ではイル・ド・フランス地方が35 050ユーロ、それ以外の地域が26 573ユーロです。世帯人数が更に増えると、上限額は更に増えます。

● 固定資産税を5年間免除
持続可能な開発に関する減税を受ける権利がある省エネ・リフォームを行い、尚且つ (1)その物件が1989年1月1日以前に建てられたものであること、(2) 年内のリフォーム費用が10 000ユーロ以上、または過去3年に15 000ユーロ以上である、という2つの条件を満たす場合、固定資産税が5年間免除されます。但しこの免除はフランスの全ての地域で行われている訳ではありません。物件を管轄する地域がこの制度を適用しているかどうかは市役所に問い合わせると分かります。

● ECO-PLS
社会的住宅の所有者が省エネ・リフォームのために9 000ユーロから16 000ユーロまでをLivret Aよりも低い金利(条件により金利設定が異なる)で借りることができるローン。

上記以外にも地域ごとに設定された特別措置や、一定の所得以下の世帯にのみアクセス可能な様々なローンが存在します。

問い合わせ窓口

省エネ・リフォームを行う際に多種多様な援助が存在するのはありがたいことなのですが、ここまで沢山ありすぎると、自分が何を使えるのか、何だか分からなくなってきてしまいそうですね。そこで「今から2017年までに50万戸の住宅がリフォームされ、2020年までにエネルギー消費を38%減少させる」ということを目標に掲げるフランス政府は、エコ・リフォーム専用の問い合わせ窓口を作りました。この秋から開設されたサイトはこちらです。

リフォームを考える際には、まずこのような無料の総合案内を利用して、自分にとって一番お得な方法を選ぶのが賢いやり方と言えそうです。


フランスでは「知っている人だけが得をして知らない人が損をする」ということが多々あるのですが、省エネ・7リフォームに関する上記の様々な措置はその典型と言えるでしょう。「窓の断熱改修工事を行ったのに、ゼロ金利ローンのことも知らなかったし、業者から特典の話も一切出なかったために、通常の出費と同じようにお金を支払ってしまった。色々な制度を知っておけば、少しは得をしたのに・・・」と後から嘆く人も少なくないようです。今回ご紹介しましたように、フランスには省エネ・リフォームに関する便利な制度どっさり用意されているので、使える時にはぜひとも利用したいですね。