フランスで一番多くの口座数を誇る商品は、利息に税金も社会保障費負担も一切課せられないLivret Aと呼ばれる口座です。それでは、そのLivret Aはフランスでの資産運用において一番有利な商品なのでしょうか?答えは明らかにNONです。Livret Aがフランスで一番なのは口座数だけで、その総預金額は決して多くはありません。それもそのはず、そもそもこの口座には預金上限額が設けられていますし、インフレを僅か上回る程度の金利しか付きませんから、Livret Aとはあくまでも万が一のための資金を入れるための口座なのです。それでは資産運用を考えるフランス人達に一番人気の商品は何か、というと今回のコラムのタイトルになっている『Assurance Vie』です。(Assurance Vieの特徴・仕組みは当社のこちらのページよりご確認いただけます。)フランス保険会社連盟(FFSA)によると、2012年11月時点でのAssurance Vieの預金総額は1兆3855億ユーロだそうです。

Assurance Vieでは、口座を開き、その中に好きな投資信託を自由に組み込んでいく、という仕組みになっています。Assurance Vieの口座内には、株・債券などの投資信託を入れて収益性を狙うこともできますし、値下がりリスクのないユーロ・ファンドと呼ばれる元本保証ファンドのみに投資して、通常の預貯金のように利用することもできます。リスクをあまり取りたがらないフランス人達は、Assurance Vieの口座内にあるお金の大部分を元本保証のユーロ・ファンドに入れていますが、実はここ数年、そのユーロ・ファンドの利率がどんどん下がってきているのです。

元本保証ユーロ・ファンドの金利動向

2002年から2011年までのユーロ・ファンドの平均利率とインフレ率のグラフを見てみましょう。


(出典 : FFSA-GEMA,INSEE)

ユーロ・ファンドの金利は通常、新年が明けて1~2ヶ月以内に「昨年の金利は○%でした」と各保険会社が発表します。このコラムを書いている時点ではまだ一部の会社の2012年度の金利が明らかになっておりませんので、平均金利も分からないのですが、現在のマーケット状況から考えると2011年度よりも更に金利が下がることはほぼ確実です。以前はインフレ率を遥かに上回る利回りを出していたのですが、ここ10年の間にまさに右肩下がりとなっていることがグラフから読み取れます。

ユーロ・ファンド内部では主に債券を中心に運用されていますが、世界的な景気減退の煽りを受け、国債から生み出される利益は微々たるものです。ユーロ・ファンドの利息は、運用利益と、そのファンドを運営する保険会社の利益配分とで成り立っています。しかしながらどの保険会社もリーマン・ショック以降、苦しい台所事情ですので、多くの利益をユーロ・ファンドに回すことはほぼ不可能な状態です。このような状況は今後、数年は続いてしまいそうですので、今年、来年のユーロ・ファンドの利率は今よりも更に下がることが予想されています。

税制面でも優遇されているAssurance Vieですから、いくら元本保証のユーロ・ファンドの金利が下がってきても、やはりLivret Aよりは高い収益性を生み出すことが期待できます。しかしながら今まではLivret Aより『遥かに』高い利回りだったところが、今後は『僅かに』高い利回りしか生み出せなくなりそうなのです。

ユーロ・ファンドの金利低下への対応法

それではこれまでAssurance Vie内で元本保証のユーロ・ファンドだけに投資してきた人は、これからどのようにすればいいのでしょうか?1つ目の選択肢は「そのままユーロ・ファンドに投資し続ける」ということです。今までより収益性は見劣りするかもしれませんが、それでも他の金融商品に比べたら高い利息を得ることができます。しかも元本保証ですから、マーケットにどんな異変が起ころうとも、残高が減ることは決してありません。資産形成において安心・安全第一をモットーとする方々にとっては今後もユーロ・ファンドは強い味方となってくれることでしょう。

2つ目の選択肢は「Assurance Vieの口座内で、元本保証のユーロ・ファンド以外にも投資するようにして、口座残高全体の収益性を高めるように試みる」というやり方です。しかしながらこの方法は程度の差こそあれ「リスク商品に投資する」ということを意味しますので、リスク管理に十分に気を配る必要があります。

Assurance Vieの口座内でリスク商品に投資する場合の注意点

2008年のリーマン・ショック、2011年のユーロ危機、と、ここ数年、世界規模での大混乱が頻発しています。巨額マネーが瞬時に世界中のマーケットを駆け巡る世の中ですので、今後もこのような金融危機は多発するものと思われます。株や債券ファンドに投資する際には、将来被るかもしれない値下がりリスクに対して細心の注意を払う必要があります。

Assurance Vieの口座内で元本保証ユーロ・ファンド以外のファンドに投資する際の流れを大まかにまとめると次のようになります。

1. 自らのリスク許容量を確かめる。
2. 現在のマーケット状況と自らのリスク許容量に基づき、アセット・アロケーションを決定する。特に、数あるファンドの中から優秀なファンドを選ぶことは非常に大切。
3. それらのファンドに投資することにより、どの程度の値下がりリスクを負う可能性があるのか確認する。
4. 実際に投資を始めた後は、マーケットを常にモニターし、必要であれば臨機応変に口座内のアセット・アロケーションの変更をする。

上記のどのステップも重要ですが、これを自分ひとりで行うのは金融業界の方でない限り非常に難しいかもしれません。確かに金融に関する情報はインターネット上に溢れていますが、本当に信頼できる金融最新情報やマーケットの雲行き、そしてウォール街のトレーダー達の動向を毎日チェックし続ける、というのは相当な時間を要することだからです。

それではプロのアドバイスを受ける場合はどうでしょう。様々なファンドを勧めてくる金融業界の人たちは、消費者にとっては皆『プロ』に見えますが、実際のところ彼らは『投資アドバイザー』と『金融商品の販売員』の2種類に分かれます。投資に関するプロのアドバイザーなら上記のステップを確実に行うはずです。一つの例として当社が行ってるサービスを次にご紹介させていただきます。

私はAssurance Vieを販売する保険ブローカーであると同時に、フランスで正式に登録している『金融投資アドバイザー(Conseiller en Investissement Financier)』でもあります。金融投資アドバイザーになるためにはフランスの一定以上の学歴を有し、金融業界での経験を持つなどの条件をクリアーしなければなりません。そして金融や税制に関する継続研修を受け続けない限り資格を失ってしまうため、私も2年ごとに60時間の研修を受けております。確かに大変ではありますが、お客様に質の高い情報をお届けするに当たり、この継続研修は非常に役に立っています。当社経由でAssurance Vieを開設し、元本保証以外のファンド(つまりリスク商品)にも投資される方々には、お客様のリスク許容量と最新マーケット状況を考慮した上で、慎重にアセット・アロケーションを組み立てます。アロケーションのご提案をする際には、例えば「リーマン・ショックが起こった2008年にこのようなアロケーションを組んでいたら、口座全体はどのような影響を受けただろうか」というような、極端な大暴落時に起こりうる状況もご確認いただきます。また毎月の月末残高報告と共に、マーケット状況を詳しくご説明し、必要と判断した時にはファンドの乗り換えのご提案もさせていただいております。当社経由でリスク商品に投資されていらっしゃるお客様方は全て、ご自身が負っているリスクをはっきりと認識し、またマーケット状況についても十分に把握されているので「なぜ今自分の口座残高が上がっているのか、または下がっているのか」を完璧に理解していらっしゃいます。

フランス一番の人気商品だけあり、様々な会社がAssurance Vieを販売しています。商業銀行、保険代理店、当社のような独立系FP会社、またはネット金融機関でも、どこでも自由に口座を開設することができます。冒頭でお話ししましたように、ここ数年の金利動向を見ると、元本保証のユーロ・ファンドのみでの運用で満足のいく利益を得ることは難しくなってきました。それなりの収益率を得るためにはアセット・アロケーションに工夫をしなければならない時代に突入しているのです。しかしながら株・債券ファンドに投資するとなると、当然のごとく値下がりリスクを負うことになります。当社にご相談されるお客様の中には「プロのアドバイスに従ってこのファンドに投資したのに、気が付かないうちにこんなに値下がりしていた。」と仰る方が驚くほど沢山いらっしゃいます。「気が付かないうちに下がっていた」ということは、一旦投資したら最後、担当者からのフォローアップは一切なかったのでしょう。元本保証のユーロ・ファンド以外のファンドに投資する、ということは、大切なお金をリスクにさらすことを意味します。昨今のマーケットは変動率が激しいので、リスク商品に投資してそのまま放っておくのは非常に危険です。フランスでの資産運用においてAssurance Vieは必要不可欠ですが、その中にリスク商品も取り入れるのであれば、そのリスクをどのようにコントロールしていくのか、そしてその会社で口座を開設した場合、どのようなアドバイスやフォローアップを受けることができるのか、について、じっくりご検討された上で投資されることをお勧めいたします。