フランス版ETF『トラッカー』は、その存在感を飛躍的に高め、投資家たちの間ではお気に入りの投資商品として、その座をすっかり定着させた感があります。2005年1月にユーロネクストに上場していたトラッカーは僅か53種類だったものが、2007年6月現在ではその数200種類に近づこうとしています。時価総額は500億ユーロ、2007年第一四半期には約定高が一日平均2億5000万ユーロにも及ぶほどになりました。

この成功の裏には、主に2つの理由があると言われています。まず簡単、便利、手数料も安く取引できるというETFの基本的な特徴によるもの。(2006年3月5日付けのコラム『フランス版ETF「Trackers」について』もどうぞご参照ください) そして、もう一つの理由はトラッカーの種類がここ最近、急激に豊富になった、ということです。今回のコラムでは、現在、ユーロネクストに上場されているトラッカーのカテゴリーごとに、その新商品を見ていきましょう。

インデックス連動型のトラッカー

ベンチマークとする指数のパフォーマンスに追随するタイプのベーシックなトラッカーです。最近ではBRICのみならず、韓国、台湾、トルコなどの株価指数に対応するものも多く出てきました。また同じブラジル関連のトラッカーでも、四半期ごとに配当を出すもの、配当を全て再投資するもの、などの種類も提供されています。

セクターごとの分類では、金融・建設・メディア・科学・旅行関連など20種類以上のセクターが用意されているので、投資家にとっては選択肢が非常に広くなっています。また非上場の会社に投資するトラッカー(Lyxor ETF Privesと SGAM ETF Private Equity LPX 50)が誕生したことも見逃せません。

また債券のトラッカーも充実してきました。「1~3年後に償還を迎える国債」「3~5年後に償還を迎える国債」など、国債関係のトラッカーも数多く誕生しています。ユーロ圏の社債に連動するトラッカー、ドル建てで発行された社債に連動するトラッカーなども用意されています。

商品市場のトラッカー

商品市場動向を表す代表的な指標CRBに連動するトラッカーなどが存在しますが、そのバリエーションはまだまだ薄く、6月10日現在、ユーロネクスト・パリで上場している商品市場のトラッカーは4種類しかありません。

運用目的によりストラテジーを組んだトラッカー

このカテゴリーのトラッカーは2つのグループに分けられます。一つ目は、グロース投資スタイル、バリュー投資スタイルのように決められた運用スタイルに基づいたタイプのもの。二つ目は、従来のインデックス連動のトラッカーにクオンツ・モデルを取り入れたり、オプションを使ったストラテジーを組み合わせたりしたタイプのものです。特に、この2つ目のタイプのトラッカーは、今年に入ってから誕生したばかりなので、今後どれだけ投資家たちの間に浸透していくのかが楽しみな商品です。

ブル・ベア型のトラッカーなど

CAC40やFTSEなどのインデックスの動きに対して、ブル型ならば上昇相場で利益が出て、ベア型ならば下落相場で利益が出る、というトラッカーです。更に、レバレッジを効かせて、インデックスの動きに対して2倍や3倍で価格が変動するブル・ベア型のトラッカーもあります。

また「どんなに株価が落ちても前年度12月31日の価格の80%までは保証される」というタイプのトラッカーも存在します。タイトルに『flexible』という文字が入っているトラッカーは、全てこのタイプです。

注目すべきは、ベア型のトラッカーでしょう。これによって、トラッカーを利用して、株価暴落時にすばやく利益を上げること、そして現物ポジションをヘッジすることができるようになりました。もちろんこれらの効果は、プット・ワラントや空売りによって以前も可能でしたので、投資家にとっては選択肢が更に広がった、ということになります。例えば2007年1月に導入されたSGAM ETF XBear CAC40は、CAC40が1%下落すると、その価値は1.8%下落する、という商品です。2007年4月20日から6月7日までの SGAM ETF XBear CAC40と株価指数CAC40の動きをグラフで見てみましょう。

sgam-xbear-v2
このように、ベア型のトラッカーは、連動している株価指数と全く逆の動きをします。「最近株価が上昇しすぎているので、そのうちドスンと下落するのではないか?」と思われるときに、このようなベア型のトラッカーを購入することによってリスクの回避をすることもできますね。


フランス人投資家たちのお気に入り商品として、すっかりその地位を確立したトラッカー。2006年度の取引総額は290億ユーロで、この数字は2005年度と比べると約2倍増でした。2007年に入ってからも、新しい商品が次々と開発され、まだまだその勢いは衰えそうにありません。投資家にとって選択肢が増えることは大変望ましいことですし、これからもトラッカー市場がどんどん広がっていくといいですね。