フランスでは住居を借りる際に、保証人を立てることを要求されるケースが多々あります。しかしながら、外国人が保証人を見つけることは簡単なことではありません。それでは保証人が見つからない場合、どのような方法があるのでしょうか?本日は賃貸保証人に代わる制度についてお話していきたいと思います。

1.銀行保証(caution bancaire)

銀行に、例えば1年分の家賃に相当する金額を預け、MMFのような元本保証の金融商品を購入します。これが物的担保となり、『万が一、家賃不払いが発生した場合、賃貸人はここから未払い分を引き出すことができる』という旨が記載された信用状が、銀行から賃貸人に送付されます。金融商品の名義は本人のままですし、利息もきちんと付きますが、賃貸契約終了時までは賃借人がここからお金を引き出すことはできません。この制度における、賃借人にとっての主なメリット・デメリットは以下の通りです。

【メリット】
● 銀行保証さえあれば、保証人がいないことについてとやかく言われる事はまず有り得ない。

【デメリット】
● 銀行保証に利用することができる金融商品は利息が非常に低い。
● 手数料がかかる。(保証金の1%程度を提示されることが多いですが、銀行との関係によりもっと下げることも可能)
● 銀行保証として預けた金額を、賃貸契約期間中、引き出すことは不可能である。

2. Assurance Vie

上記の銀行保証の『低金利商品で運用』『手数料がかかる』というデメリットを克服するのがAssurance Vieを利用する方法です。Assurance Vieはフランスで大人気の金融商品で、税制面での優遇、年金準備、資産運用に利用できるマルチな商品です。そのAssurance Vieを利用して、家賃不払いの保証をしてもらうことができます。銀行保証と全く同じ仕組みですが、保証の設定に手数料がかからず、更に保証金に対して比較的高い利息が付くところが特徴です。一つ注意が必要なのは、保証の設定には時間が掛かりませんが、Assurance Vieの口座開設にはかなり時間がかかる、ということです。つまり、口座をまだ開いていない人が「いい物件を見つけたので、Assurance Vieの口座を開設して賃貸の保証を頼もう」と思っても、時間的に間に合わない可能性が高い、ということです。反対に、既にAssurance Vieの口座をお持ちの方が保証を頼む場合には、全く問題なく、素早く保証の設定ができます。

【メリット】
● 保証金として預けてあるお金を高利回りで運用できる。
● 設定に手数料がかからない。

【デメリット】
● あまり知られていない方法なので、賃貸人に断られる可能性もある。
● 賃貸契約期間中、口座からお金を引き出す際には、賃貸人の承諾が必要となる。

3.ロカパス

1% logement という組織によって提供されている制度で、家賃未払いの場合、賃貸契約開始時から3年以内の間に限り、最長18ヶ月分の未払い家賃を保証しています。以前は企業の従業員にのみに適用されていましたが、現在では派遣社員、30歳未満の失業者 ・一定の条件を満たす学生、退職後5年未満しか経過していない人、など多くの人にその門戸が開かれるようになりました。ロカパスによって補償される金額の上限は月額2300ユーロです。

またロカパスは、家賃保証 《La Garantie LOCA-PASS》の他に、もう一つ、貴重なサービスを提供しています。それは《L’avance LOCA-PASS》と呼ばれ、敷金を金利0%、手数料なしで借りられるというものです。融資を受けてから3ヵ月後に返す方法、月々返済していく方法、など返済方法はいくつか用意されていますが、いずれにせよ返済期間は最長で3年までです。ちなみに本年度から、フランスの賃貸契約の敷金は家賃の1か月分で済むようになりました。(以前は2か月分でした)

【メリット】
● 保証金を預ける必要もなく、手数料も一切かからない。

【デメリット】
● 『賃貸契約開始時から3年の間のみが保障期間となる』ということが、賃貸人にとっては不安要素となるので、断られる可能性が多々ある。

4.GRL (Garantie des Risques Locatifs)

GRL (Garantie des Risques Locatifs) は2007年から導入されたばかりのシステムです。
その財源は国、1% logement、賃貸人からの保険料、の3つから成り立っています。借り手にとっては無料のこの制度ですが、賃貸人は保険料を支払わなければなりません。果たしてその保険料はいくら位なのでしょうか?個人が賃貸を行っている場合、保険料は家賃+管理費の2.5%、不動産賃貸が事業で行われている場合は1.8%になります。前述のロカパスは賃借人・賃貸人共に無料で利用できる制度ですが、契約開始時から3年の保証しかしてくれません。GRLは賃貸人が保険料を支払わなければなりませんが、その代わり賃貸契約が続く限り、最長24ヶ月分の未払い家賃を賠償してくれます。また賃借人の過失により必要となった修繕費も、7700ユーロを上限にGRLから支払われます。更に、万が一、事態が解決しなかった場合の弁護士費用、取立て・立ち退きにかかる費用も保険の対象となっています。民間の『家賃未払い補償保険』の保険料は家賃+管理費の2.7~4%ですので、それと比べると非常に効率のいい保険だと言えます。尚、GRLの保険料は、不動産収入から経費として差し引くことができます。GRLを利用するためには、まず賃借人がPASS-GRLのパスポートを申請しなければなりません。

【メリット】
● 保証金を預ける必要もなく、手数料も一切かからない。

【デメリット】
● ロカパスよりも安心度は高いが、賃貸人が保険料を支払わなければならない為、断られる可能性もある。


以上、保証人を立てずにフランスで住居を借りるに当たっての方法を4つご紹介してきましたが、如何でしたでしょうか?それぞれにメリット・デメリットがありますが、一番の重要なのはやはり『賃貸人がその方法でOKするかどうか』です。仮に賃貸人が知らない方法だとしても、その方法を賃貸人にとってのメリットを交えて的確に説明することによって、承諾してもらえるかもしれません。賃貸契約に当たっての保証人探しは、外国人にとって頭を痛めるテーマではありますが、双方が納得いくような方法を選択できるのが理想ですね。