2009年12月7日から19日までの間、コペンハーゲンで第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP15)が開催されました。フランスでは現在、今回の会議に対して、失望の波が巻き起こっています。更なる地球温暖化を阻止するために、本来なら今すぐにでも世界各国が一丸となり高い目標を掲げ、温室効果ガス排出量を削減しなければならないところですが、コペンハーゲンでは先進国と途上国のそれぞれの思惑がぶつかりあい、具体的な削減目標の義務付けが合意文書に盛り込まれず、またその合意文書も採択されたのではなく、『合意に留意する』と承認されただけにとどまってしまったことは、非常に残念です。

今回の会議で期待されていたことと、実際に合意文書に記されたことを、欧州、フランスの観点も交えて4つのポイントから確認してみたいと思います。

1. 温暖化ガス排出の削減目標

産業革命以降の気温上昇幅を2度までに抑えるため『2050年までに温室効果ガスの排出を50%削減する』という目標値がコペンハーゲンで明確化されることが期待されていました。ちなみに気候変動に関する政府間パネル(IPCC) によると、先進国は温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%から40%に削減、2080年までに80%に削減する必要があるそうです。尚、5ヶ月前にイタリアのラクイアで行われた主要国首脳会議(G8)では、『2050年までに先進国全体で80%以上の削減を目指す』という、一歩進んだ合意が採択されています。

【コペンハーゲンの合意文書】 産業革命以降の気温上昇は2度を超えるべきではないという見地は、合意文書の第1節に明記されています。しかしながら気温上昇を2度に抑えるために必要な具体的数値目標は盛り込まれていません。代わりに、先進国は2020年までの温室効果ガスの削減数値目標を、途上国は数値目標なしの削減計画を、来年1月末までに報告すること、と書かれています。欧州は2050年までに80%以上の削減を目指すという目標を掲げていますが、中期的な目標値である2020年までの削減率は一部で期待されている30%という数字ではなく、20%になるのではないか、という意見もあります。

2. 国際的監督機関の設立

温室効果ガス排出量を監督する国際的機関の設立はデリケートな問題です。オバマ大統領は、そのような独立した機関が各国(特に中国)をしっかり監視することを望んでいます。欧州は、全ての国に対応する単一の監視基準ではなく、先進国、発展途上国の双方に別々の基準を設けることにしてもいいのではないか、という案を出していました。発展途上国は、地球温暖化対策はあくまでも自主的なものであるべきだ、という考えの下、あらゆる監視を拒んでいました。

【コペンハーゲンの合意文書】 中国の強固な反対があり、監督機関の設立については触れられませんでした。しかし技術・資金援助を受けた途上国はその削減計画の進行状況を2年ごとに国連に報告しなければならない、ということは合意文書に盛り込まれたため、ある程度の国際的な監視がなされる可能性はありそうです。

3. 途上国への援助

地球温暖化対策として、太陽エネルギーなど近代的なエネルギーの使用が望まれます。しかし途上国にはそれらのクリーンエネルギーを開発する資金が十分にありませんから、先進国の資金援助が求められられています。また温暖化により干ばつや洪水など異常気象が起こりやすくなっているため、そのような事態が起きた時の対策支援も必要となってきます。

また温暖化に大きな影響を与えている森林破壊の阻止もしなければなりません。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、世界の温室効果ガス排出量の20%は森林減少が原因だそうです。南米やアフリカなど森林を持つ途上国では、食糧生産などを目的とする森林の大量伐採が続いています。森林の減少を防ぎ、適切な植林や間伐など持続可能な森林経営を推進するには、先進国からの援助が必要不可欠です。

援助をしなければならないことは分かっていても、一体どの位の金額をどのように援助すればいいのでしょうか?またそのお金を誰が運営・管理していくかも焦点になっていました。

【コペンハーゲンの合意文書】 途上国に対し、2010年から2012年にかけて計300億ドルの支援を、2020年までには年に1000億ドルを支援できるように努力することになりました。2012年までの援助に関しては既に、米国が36億ドル、欧州が106億ドル、日本が110億ドルを支援することを公言しています。これらの支援の大半はコペンハーゲン・グリーン気候基金を通じて行われることになります。合意文書の中では、その資金が先進国間でどのように分担されるかなど具体案には一切言及されていません。

4. ポスト京都の枠組みについて

1997年に締結された京都議定書は、先進国が温室効果ガス排出量を2008年から2012年にかけて、各国別に定められた目標値まで削減する、というものです。しかし京都議定書では、途上国に対する削減義務はなく、また義務を負うはずの米国は議定書から離脱しています。日本と欧州は、世界第1位と2位の温室効果ガス排出国である中国と米国も含まれるポスト京都の枠組みが必要だと主張してきました。

京都議定書の締結国の中でも、日本のように温室効果ガス排出量を、本来なら削減しなければならないところを、反対に大きく増加させてしまっている国もあれば、フランスのように目標値-8%(1990年比)のところ、2007年時点で既に-6%と、順調に削減している国もあります。ポスト京都議定書を仕上げるためには準備期間として3年程度は必要となりますので、コペンハーゲンでその大まかな枠組みが決定することが期待されていました。

【コペンハーゲンの合意文書】 今回の合意文書の中で、ポスト京都に関することは一切言及されませんでした。2013年以降の枠組みは、来年11月にメキシコで開かれるCOP16に先送りされた形になります。


このようにコペンハーゲンの合意文書で具体的な数値として示されたのは途上国への支援のみで、温暖化対策の要となる対策については決定がなされませんでした。次回の気候変動枠組み条約締約国会議は、2010年11月にメキシコで開催されます。コペンハーゲンのこの曖昧な合意から、温暖化ガス排出国全体を拘束するような力強いポスト京都議定書を生み出すことができるのかどうか、各国の首脳陣に大きく期待します。私たちが暮らす大切な地球の問題ですから、私たち自身もできる範囲で省エネやエコを積極的に生活に取り入れるようにしたいですね。